2015年7月に読んだ本は、『いま求められる図書館員―京都大学教育学部図書室の35年 (岩田書院ブックレット 17)』1冊でした。 7月1日に初めての異動があって、ドタバタしていた記憶しかありません。
いま求められる図書館員―京都大学教育学部図書室の35年 (岩田書院ブックレット 17)
- 作者:福井 京子
- メディア: 単行本
この本について、井上昌彦@空手家図書館員 (@karatelibrarian) | Twitterさんが、【読了】 「いま求められる図書館員: 京都大学教育学部図書室の35年」 (福井京子 著)で大変わかりやすくまとめてくれております。
この本は、人材育成や資質向上といった点を論じたアカデミックなものではありません。 図書館員はどういったマインドを持つべきか、という点について、トコトン述べた本です。ある意味、精神論の本かもしれません。(笑)
著者が大学図書館職員としてどのように働いてきたかが詳細にわかり、また情報サービスやレファレンスサービスの事例もたくさんあり、勉強になりました。「専門的な世話焼き」として、様々なサービスを高いレベルで展開している様子がいきいきと伝わってました。
一方、 <書評>福井京子著 『いま求められる図書館員 京都大学教育学部図書室の35年』では、以下のような指摘も。
著者が果たしてきたような役割を全うすることは、数年での異動が繰り返される現在の人事システムのもとでは極めて困難であるのは自明であろう。専門性と流動性という相反することもある二つの要素をどのように考えるのか、著者個人の体験を踏まえて論じてもらえたならば、図書館員のあるべき姿についてもっと議論が広がるように思われる。
もうひとつ。
公共機関のサービスには継続性が求められる。つまり、どの職員が担当しようと、あるレベルまでのサービスは間違いなく提供されなくてはならない。そうでなければ公平性が担保できないからである。 「Aさんがいなくなってから、あそこの機関のサービスは格段に悪くなった」というのは、本来あってはならない。その意味では、ノウハウの確立と継承が、公共機関の職員にとって大変重要である。他方、実に多様な利用者の要求に応え、彼らに満足感を与えられるようになるには、「あるレベルプラスアルファ」のサービスが不可欠であり、そこが熟練職員の腕の見せ所でもある。そうした普遍性と特殊性の兼ね合いは、多くの職場で良心的な職員が頭を悩ませているのではなかろうか。著者の体験からこうしたことに何が言えるか、ぜひ展開してもらいたかったと感じる。
上記のような視点で、人事異動や個人と組織のレベルアップについて考えるきっかけにもなりました。それほど、この本で紹介されているサービスの内容やレベルのインパクトが大きかったのだと思います。
この本が最高の引継書!? こういう場合こそ、レファレンス協同データベースの出番か? 第11回レファレンス協同データベース事業フォーラム記録集の自分の発言を抜粋(p.34)。
試行的にデータ登録を始めてから人事異動があり、レファレンス未経験者が新たに配属されましたが、今まで登録した事例が業務マニュアルを補完する役割を持ち、「実際にどのような質問があって、どのように対応しているかがわかる」と大変好評でした。
レファ協は、知識や経験などを集積して、新たな人を育て、知識を創造する下地となっていると思いますので、レファレンスサービスの過程において大変重要な役割を果たしていると感じました。
全体的には、【読了】 「いま求められる図書館員: 京都大学教育学部図書室の35年」 (福井京子 著)のように前向きに捉えたいと思います。
この本に記された福井さんの行動を、批判的に読む方もいるでしょう。「それは図書館の仕事ではない」、「個人プレイで仕事をしている」などなど。
それもあながち、的外れであるとも思いません。
しかしそれ以上に、とにかく徹底的にユーザーのことを考える図書館員がいることを、前向きに評価したいと思います。
そして、ヒントにさせていただきたいと思います。
特に若い図書館員の皆さんに、著者の言う「図書館員コンシェルジュ論」とそのマインドを、知って欲しいと思います。 ユーザーの信頼を得て、気軽に何でも相談されるようになることが、私たちのスタート地点です。そのスタートに辿り着くためのヒントが、この本から得られるのではないでしょうか。