平成28年度中国・四国地区国立大学法人等財務会計事務研修(初級編)に参加しました。
目次
概要
- 到達目標(研修修了時に身につけられる能力等):
- 日時:2016年11月16日(水)14:00-18日(金)12:00
- 会場:鳥取大学鳥取キャンパス広報センター
- 主催:一般社団法人国立大学協会中国・四国支部
参加メモ
全体のバランスや文脈は考慮せず、講演を聞いたなかで自分が興味を持ったところを中心に列挙しました。
鳥取大学副学長による講話(11月16日(水)15:00-15:50)
研究費不正使用についての話がメインでした。
- 研究費不正使用について、手段が複雑化・巧妙化しており、組織的な取組強化を進める必要がある。
- ルールを明確化・統一化する。
- ルールの全体像の体系化と構成員への周知をする。
- ルールと運用の実態が乖離していないか。
- リスクアプローチ監査を実施する。
- アメリカの犯罪学者であるクレッシー教授によると、不正は、「動機」「機会」「正当化」の3要素がすべてそろったときに発生する。
- 国立大学法人法第18条(役員及び職員の秘密保持義務):国立大学法人の役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。
- 国立大学法人法第19条(役員及び職員の地位):国立大学法人の役員及び職員は、刑法 (明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
- 使用された資料
- CiNii 図書 - 大学のコンプライアンスの在り方に関する調査研究(2016年8月)の「3-5 研究不正」
- 「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」に係るコンプライアンス教育用コンテンツ:文部科学省の管理者向けの印刷用資料(2014年6月)
- 公的研究費に係る不正事例(研究機関におけるコンプライアンス教育用コンテンツ):文部科学省(2016年3月)
- 国立大学法人法コンメンタールの第18条と第19条のページ
- 仕事力、老化してない? 酒席は同僚ばかり=人脈硬化/挑戦案件は次々否定=NO梗塞 :日本経済新聞
文部科学省職員による講義(11月16日(水)16:00-17:00)
国立大学法人の動向について講義でした。
- ミッションの再定義から、国立大学改革プラン、国立大学経営力戦略へと続いている。
- 将来ビジョンに基づき、自己改革・新陳代謝を実行する。
- 経営的視点で大学運営を行うことで経営力を強化する。
- 指定国立大学法人制度を創設する(平成29年4月1日施行)。
- 「国立大学法人等の平成27年度評価結果について」は、とくに広報を意識し、見せ方を工夫した。
- 国立大学法人評価について、毎年度の事業実績評価では、主として業務運営・財務内容等の進捗確認をしている。中期目標期間全体の評価では、中期目標の達成状況の評価と教育・研究の状況も含めた全般の評価を行う。
- 第2期については、平成29年5月頃に公表予定。平成30年度以降の予算に反映される。
- 情報セキュリティ強化は、経営上の重要な課題である。
トーマツの講師による講義・演習(11月17日(水)9:00-17:00)
2日目は、休憩をはさみつつ丸1日、国立大学法人会計基準の概要、複式簿記の基礎、国立大学法人会計基準に基づく会計処理(収入取引と支出取引)及び財務諸表の見方についての講義・演習でした。
午前は、ほとんど簿記3級レベルの内容が中心だったため、短時間で復習ができました。
午後は、国立大学法人会計基準に基づく内容でした。企業会計に関する本しか読んだことがなかったので、企業会計と国立大学法人会計基準の違いを知ることができてよかったです。支出取引に関する会計処理は企業会計と似ていたので理解しやすかったのですが、収入取引に関する会計処理についてはまだ理解が不十分な点もあります*1。
- 収益化のルールは3つ。
- 図書は、償却資産に区分されつつ、保有中は減価償却費を計上しない。除却時等に費用になる。
- 購入時:【借方】図書 100 / 【貸方】現金 100
- 除却時:【借方】図書費 100 / 【貸方】図書 100
- 購入時:
- 科学研究費補助金は国立大学法人の資産ではなく、研究代表者個人に交付され、国立大学法人が経理を代行しているに過ぎない。
- 財務諸表は、利用するために作成する。作成すること自体が目的ではない。ただし、詳細すぎる分析を行っても、労力に対して得られる効果は少ない。
- 財務諸表分析における比較対象
- 法人間の比較:各法人の特徴が把握できる。
- 期間比較:分析対象期間の期間的な特徴が把握できる。
- 財務諸表分析における規模の捨象
- 百分率:類似法人以外の法人との比較において規模の相違が捨象できる。
- 単位あたりの金額:例えば、学生1人あたりの教育経費。
ちなみに、図書が寄贈されたときとその後除却されたときの仕訳はこうなるのかな? 間違っていたら教えてください。修正します。
- 寄贈時:【借方】図書(資産) 100 / 【貸方】資産見返寄付金(負債) 100
- 除却時:【借方】図書費(費用) 100 / 【貸方】図書(資産) 100
【借方】資産見返寄付金(負債) 100 / 【貸方】資産見返寄付金戻入(収益) 100
グループディスカッション(11月18日(金)8:30-11:30)
公的研究費等の不正使用防止について、グループディスカッションをしました。他大学の事例を知ることができました。
おまけ
- 作者:青木 志帆
- 発売日: 2015/01/15
- メディア: 単行本
せっかく会計の研修に参加したので、買ったきりになっているこの本を近いうちに読みたいです。
*1:勉強不足のため、国立大学法人会計基準では、なんとなく無理やり(?)収益化しているように感じるところがあります。営利目的ではないため仕方がないのだと思いますが、そのあたりがまだしっくりきていません。見当違いなことを言っているかもしれません。【2017年1月17日加筆→】『制度とおカネのよもやま話―国立大学法人会計入門』を読んでスッキリしました。「国立大学法人は民間企業とは設立趣旨が異なり、国立大学法人の使命である教育・研究事業の実施が最優先事項。事業実施のため国費(運営費交付金)が投入されている。そのため、予定されている事業(中期目標、中期計画記載の事業)が予定通り行われば損益が均衡する仕組みである。そのような仕組み上、損益計算で発生する利益は、経営努力の結果(経費の節減、自己収入の増加)と見なされる」(p.43、下線省略)と書いてありました。2016年12月に読んだ本 - 猫に夢研究所