猫に夢研究所

自分の備忘録を公開している感じです。国立大学法人で大学図書館職員(図書系職員)として働いています。みなし公務員です。

戸田山和久著『教養の書』読了

戸田山和久著『教養の書』を読了しました。

教養の書 (単行本)

教養の書 (単行本)

  • 作者:戸田山 和久
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

  • 読了日20200718
  • 入手日20200620
  • 明屋書店MEGA新下関店で購入した。
  • 帯の情報。
    • 君が大人になるための勇気と装置をもて!

    • 学び生きるうえで大切なすべてを伝える入門講義(おせっきょう)

    • 万人の自由のために、魂の自由のために――

  • 格調の高い装丁のデザインも、読みやすいソフトカバーなのもいい。
  • 「I 教養ってなんだ」では、教養について様々な検討をした上で、p.125で教養の定義をビシッと完成させている。スッキリ!
    •  【定義】われわれにとっての教養とは、「社会の担い手であることを自覚し、公共圏における議論を通じて、未来へ向けて社会を改善し存続させようとする存在」であるために必要な素養・能力(市民的器量)であり、また、己に「規矩」を課すことによってそうした素養・能力を持つ人格へと自己形成するための過程も意味する。
       ここでの素養・能力には、以下のものが含まれる。①大きな座標系に位置づけられ、互いに関連づけられた豊かな知識。さりとて既存の知識を絶対視はしない健全な懐疑。②より大きな価値基準に照らして自己を相対化し、必要があれば自分の意見を変えることを厭わない闊達さ。 公共圏と私生活圏のバランスをとる柔軟性。③答えの見つからない状態に対する耐性。見通しきかない中でも、少しでもよい方向に社会を変化させることができると信じ、その方向に向かって①②を用いて努力し続けるしたたかな楽天性とコミットメント。

  • 文体が軽く、読み物としておもしろかった。注が多く、その内容もおもしろかった。
  • 教養したり、学問したりするモチベーションがあがるいい本だと思う。
  • 読みたくなる本や観たくなる映画が増えた。
  • 歴史的センスの磨き方(p.262-269)
    1. まずはグローバル・ヒストリーを学ぶ*1
    2. 自分の専門分野の歴史から拡げていく
    3. 自家製世界史年表をつくる
  • 国会図書館の書庫を見学させてもらったときに、最新の防火設備についても解説してもらった。火が出たら、シャッターで隔離し消化ガスを噴出させる。「そのときここにいたら死んじゃいますね」と言ったら、司書さんは「ええ、でも私たちの代わりはいますが、ここにある本は一冊ずつですから」と答えてニヤッと笑った。ちょっと感動した(p.379)

目次は、以下のとおり。

序 私はいかにして心配するのをやめ、教養について書くことになったか

I 教養ってなんだ
第1章 キミが大学で学ぶことの人類にとっての意味
第2章 たかが知識、されど知識
第3章 知識のイヤミったらしさとどうつきあうかについて、そして「豊かな知識」に何の意味があるのかについて
第4章 教養イコール「知識プラスアルファ」のアルファって何じゃ、と考えてみる
第5章 「読書の意義は何だろう」ということを教養の観点から考え直してみる
第6章 われわれは何に向かってわれわれを教養するのか
第7章 教養とは何かの定義を完成させるぜ!

II 教養の敵は何か、それとどう戦うべきか――現代イドラ論
第8章 教養への道は果てしなく遠い。だのになぜ歯をくいしばりキミは行くのか
第9章 教養への道は穴ぼこだらけ
第10章 科学が発展したら、人間はかなりアホだということがわかってしまったという皮肉
第11章 ベーコンの後継者は誰か。彼らからわれわれが学ぶべきことは何か
第12章 どうやって、居心地のいい洞窟から抜け出すか
第13章 批判的思考(クリティカル・シンキング)って流行ってるよね。でも、何のためにそれが必要なんだろう
第14章 最後のイドラは「学問」だって。だったらどうすりゃいい?

III 教養への道の歩き方――お勉強の実践スキル
第15章 大学に入っても、大人になっても語彙を増やすべし
第16章 歴史的センスの磨き方
第17章 種族のイドラ洞窟のイドラに抵抗するための具体策
第18章 市場のイドラを再考する――インターネットとの部分的つきあい方
第19章 劇場のイドラに抗うための「リサーチ・リテラシー
第20章 論理的思考は大切だと言うけれど、論理的思考って何かを誰も教えてくれない……
第21章 ライティングの秘訣
第22章 ツッコミの作法
第23章 大学は天国じゃないんだ。かといって地獄でもない
第24章 無駄な勉強をしたくないひと、何かの手段として学ぶひとはうまく学べない


あとがき

https://www.chikumashobo.co.jp/special/enlightenment/

*1:教養のグローバル・ヒストリー:大人のための世界史入門』が薦められており、すぐに買った。まだ読んではいない。