猫に夢研究所

自分の備忘録を公開している感じです。国立大学法人で大学図書館職員(図書系職員)として働いています。みなし公務員です。

法令読解と法制執務の学び方 : おすすめの本を中心に

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ぼくのかんがえたさいきょうの法令読解と法制執務の学び方。

目次


法令には、読み方・つくり方がある

タイトルに、法令読解と法制執務という言葉を使っています。法令読解については、文字通り、法令というルールの読み方のことです。一方、法制執務については、あまりなじみがないかもしれませんが、法令というルールのつくり方のことです。

法学を独学する過程で、次のことを学びました。

  • 法令には、読み方がある。
  • 法令には、つくり方がある。
  • 読み方・つくり方の入門書や基本書、専門書などレベルごとの本が整備されている。

法令読解については、法治国家において、あらゆる人に関係するものであるということがイメージしやすいと思います。また、消費者・利用者として関わることが多い契約書・規約・規則なども法令に近い形で書かれているものが多く、役立つ場面が多いです。

一方、法制執務については、一見、直接的に法令をつくる立場にある公務員・議員にしか関係ないように思えます。しかし、法制執務は法令というルールのつくり方の知識なので、仕事やコミュニティなどで、いろいろなルールをつくるときに応用できるのです。もちろん、法制執務の知識をどこまで細かく厳格に適用するかは、時と場合によると思います。自分の場合、法制執務を学んでいたことが、所属組織の規則を改正するときやコミュニティを運営するときのルールづくりの考え方に役立ちました。また、直接的にルールをつくる機会がなくても、つくり方を意識するようになると、読み方も変わると思います。

それでは、法令読解と法制執務を独学する過程でよかった本をレベル別にまとめましたので、それらの紹介を中心に、学び方の1つの例として参考にしていただければと思います。


レベル1 : 法学・法令全般の入門書

法学・法令全般の入門書から学びました。自分は入門書が複数出版されている学問分野であれば、複数冊読むタイプなので、ここでは3冊紹介します。いずれの本も目次が公開されているので、自分にあっていそうなものから読んでいけばいいと思います。


『法令入門―法令の体系とその仕組み』

  • 短時間で法令の概要、考え方がつかめる。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • http://www.hougakushoin.co.jp/book/b92713.html
    • 法令の体系, 個々の法令の組立て方, 法令の効力, 法令用語, 法令解釈など, 法令を学び, 法令を読む際に必要となる基本的な知識を解説した入門書。


『プレップ法学を学ぶ前に <第2版> (プレップシリーズ)』

  • 法学の基礎知識を学べる。
  • 東京大学法科大学院未修者コースの入学予定者に行われた授業の資料をもとに作成された本ということもあり、とても読みやすい。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://www.koubundou.co.jp/book/b329722.html
    • 法学を学ぶ前に読むと効果絶大、法学の世界への垣根を軽々跳びこえるための入門書!

    • 東大法科大学院未修者コースの学生のために書かれた『法学入門』。一気に読み通せてしまうほどの分量で、法律を初めて学ぶ人が感じる違和感を緩和させ、法律の世界の特殊性をやさしい言葉で説明し、勉強に取りかかる前に立ちはだかる垣根を低くする、そのことだけをめざした内容になっています。だから、ごちゃごちゃ難しいことやどうしても必要なこと以上は書かない、という姿勢が貫かれています。

    • 講義や教科書で、どうしてこんな解釈の仕方をするんだろう、なんで条文ってこんなに抽象性が高いんだろう、そもそも六法や判例集ってどうやったら使いこなせるようになるんだろう。そんな素朴な、でも、初学者にとっては切実な疑問に答える、法学を学び始める前にぜひ読んで欲しい、大人気の入門書です。民法改正をふまえた最新版の登場です。


伊藤真の法学入門 補訂版 講義再現版 (伊藤真の入門シリーズ)』

  • 随所に法学学習の心構えやポイントが書いてある。
  • 「第5編 法の使い方、学び方」は、学習をすすめる上で参考になった。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7362.html
    • 2010年刊行以降、初学者、資格試験受験者から確実に法学の核心が理解できると高い支持を得ている入門書が法改正などに対応して補訂。


レベル2 : 法令読解・法制執務の入門書

ここでも複数冊紹介したかったのですが、ここまで読みやすい本は1冊しか見つけられませんでした。


『新版 絶対わかる法令・条例実務入門』

  • 法令読解と法制執務の本で1番最初に読むといいと思う。
  • たくさん本が紹介してあり、読みたい本が増える。
  • 公務員の方は、同じ著者の次の2冊も合わせて読むといいと思う。同じ出版社で判型も同じ四六判なので、これらを合わせて勝手に「林雄介3部作」と名付けて呼んでいる。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://shop.gyosei.jp/products/detail/9310
    • もっとも簡単な法令・条例作成実務のガイドブック

    • 法令・条例作成業務に携わる人のために、法令の作り方、法令用語、国会での仕事などをわかりやすく解説しています。著者の実体験を基に「法令業務」のコツを伝授します。

    • 巻末には、これだけは読んでおきたい、そろえておきたい「役立ち本」を解説付きで収録しています。


レベル3 : 法令読解・法制執務の基本書

独学するうえで、ここのレベルで紹介する4冊をいかにものにするかが肝だと感じました。要精読です。


『法令用語の常識 改訂版 (セミナー叢書)』

  • 「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」、「場合」と「とき」と「時」、「その他」と「その他の」などの基本用語が大変わかりやすく説明されている。
  • なかには、「校長」、「学長」、「総長」のような使用するところが限定されるマニアックな用語も取り上げられている。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://www.nippyo.co.jp/shop/book/972.html
    • 「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」の使い分けをはじめとして、法令用語についての数々の約束事を元法制局長官たる著者が平易に解説したもの。改版を機に引用を新しくし、内容をさらに充実した。


『法令解釈の常識 (セミナー叢書)』

  • 法令解釈の基本的な心構えや法令解釈の方法が学べた。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://www.nippyo.co.jp/shop/book/973.html
    • 法令を正しく解釈するには、単に文字の意味を明らかにし文理を追うだけでは足らず、論理解釈、目的論的解釈等、さまざまなテクニックを使わねばならない。本書は、具体例をひきながら、それらのテクニックを平易に解説。

法令解釈の種類:

  • 法令解釈
  • 学理的解釈
    • 文理解釈(文字解釈)
    • 論理解釈
      • 拡張解釈
      • 縮小解釈
      • 変更解釈
      • 反対解釈
      • 類推解釈
      • もちろん解釈

法令間の矛盾抵触を解決するための諸原理(優先順位):

  • 法令の所管事項の原理
  • 法令の形式的効力の原理
  • 後法優越の原理
  • 特別法優先の原理


『法令作成の常識 (セミナー叢書)』

  • 規則の制定や改廃などの実務に応用できる立法技術ことが学べた。
  • 「法令立案にあったってもつべき基本的な態度」を忘れないようにしたいと思った。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://www.nippyo.co.jp/shop/book/974.html
    • 内閣法制局長官としての永年の経験を土台にして、法令作成の原理・原則とコツを、豊富な実例にもとづいて説明したもので『法令用語の常識』『法令解釈の常識』とともに法曹人・公務員・実務家・学生必携の書である。

法令立案にあったってもつべき基本的な態度:

  • まずはじめに考えるべきこと
    • それが立法問題かどうかということおよびどういう法形式を選択するかの問題
    • 法令の内容に関する問題
    • 形式上の整備に関する問題
  • 法令らしい法令を作ること
  • 法形式の選択を誤らないこと
  • 実効性のある法令を作ること
  • 内容の正しい法令を作ること
  • 他の法令との調整を忘れないこと


『最新 法令の読解法 四訂版』

  • 出版社品切れ。Amazonでは、定価より高い価格で出品されている。
  • 法令の読み方について体系的にまとめられている。
  • 図解されているところがわかりやすい。
  • 巻末の付録も便利。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://shop.gyosei.jp/products/detail/6213
    • 近年における法令の改廃は大変に激しいものがあります。
      本書は、前回版(2006年発刊)の内容を最新の法令をベースに見直して発刊するものです。

    • 法令を読む際に心得ておくべき基本的な事柄をやさしく解説します。
      法令の体系と基本形式をやさしく解説します。
      複雑な条文の読み方について具体的に図解します!
      最新の条文や判例を引用して、法令を読み解くためのコツとポイントを明示します。
      難読語表や、知りたい項目がすぐに引ける事項別索引付きです。


レベル4の1 : 法令読解の専門書

ここまでのところが法令読解の総論だとしたら、これからはより具体的な各論に移ります。


法令そのものの読解に挑戦する

法令読解の基礎・基本は学んだので、興味のある法令そのものの読解に挑戦するといいと思います。今までよりもかなり読みやすくなっているはずです。


定評のある専門書に取り組む

メジャーな法令については、それぞれの法令名をそのままタイトルとしたような分厚い専門書が出版されていることが多く、なかにはその法令や分野で定番・定説となっているものがあります。定評のある専門書があるのであれば、それにも取り組んでみてください。

ここで、もし歯が立たなかったら、法令読解の復習をしつつ、レベルを落としてその法令の入門書に取り組みます。

マニアックな法令についても、関連する本なら意外と出版されているかもしれません。例えば、『国立大学法人法 コンメンタール 改訂版』という本もあります。


レベル4の2 : 法制執務の専門書

ここで紹介する本は、自分は通読してません。法制執務の担当者でなければ、通読はしなくても、適宜参照できればいいのではないかと思っています。


『新訂 ワークブック法制執務 第2版』

  • 中央省庁でよく使われているらしい。
  • 縦書きのQ&A形式で書かれている。
  • 概要と目次は、次のリンク先で確認できる。
    • https://shop.gyosei.jp/products/detail/9593
    • 『ワークブック 法制執務』 昭和50年初版発刊!累計発行部数7万部! 霞が関で読み継がれてきた法制執務の必携書『ワークブック法制執務』が全面改訂! 全国の官公庁で永く愛用されてきた、まさに定本中の定本の「新訂・第2版」として発刊です!

    • 『ワークブック法制執務』は法令審査の専門家が問答形式で法制執務の知識、立法技術を解説するもの。入門から実務のプロまで、国・自治体の法制執務担当者の必携書です。 法制執務のシステム化が進む今だからこそ、押さえておくべき「法制執務の基本」がこの1冊に網羅されています。

    • 本書の編著者である法制執務研究会は、内閣法制局で法令審査を長年担当してきた法制執務のエキスパート。極めて難度の高い法律の起案、審査などを手掛けてきた経験者集団にほかなりません。


法制執務詳解 新版III』


おわりに

法学部の学生って、どうやって法令読解と法制執務を学ぶんだろう? 東京大学法学部ではどのように位置づけられているのかを知りたくて、Webサイトでカリキュラムやシラバス、入学案内を見たけどよくわかりませんでした*1

catalog.he.u-tokyo.ac.jp

www.j.u-tokyo.ac.jp


「法令読解」というズバリそのままの科目名でありそう気がするけど、探し方が悪いのか見つからない。一方、法制執務は、大学では扱わないのかなと思ったり。

他大学の事例でもいいから、法学部で法令読解と法制執務をどうやって学ぶのか知ることができれば、参考になりそうです。


おまけ : 大学職員に向けて

なお、大学職員に向けては、次のブログ記事が参考になります。

high190.hatenablog.com


オープンアクセスになっていないこともあり、残念ながらまだ読めていませんが、次の雑誌記事もあります。

ci.nii.ac.jp


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