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猫に夢研究所

自分の備忘録を公開している感じです。国立大学法人で大学図書館職員(図書系職員)として働いています。みなし公務員です。

平成27年度学術情報リテラシー教育担当者研修に参加しました。

2015年11月18日(水)〜11月20日(金)に、平成27年度学術情報リテラシー教育担当者研修に参加しました。

目次:


学術情報リテラシー教育担当者研修の概要

教育研修事業 - 学術情報リテラシー教育担当者研修

目的

情報リテラシーとは、情報に関する基礎的な知識・技能であり、情報の「探索・収集」「整理・分析・評価」「表現・発信」までの一連の能力である。本研修では、学術情報リテラシー教育に必要な情報リテラシー全般に渡る知識・技能の修得を目的とする。

到達目標

所属機関の教育内容へ関与しながら、学術情報リテラシー教育を企画・運営し、所属機関の様々な立場の構成員に対して、学術情報を活用する方法について的確な支援ができるようになる。また、学術情報リテラシー教育への関与を促すことができるようになる。

会場・日時、カリキュラム・講義資料及び成果物

学生時代からCiNii Articlesなどでお世話になっているNIIにはじめて行けるというのも楽しみでした*1

カリキュラムは、3日間、9:00から17:00又は17:30までのがっつり盛りだくさんです。講義だけでなく、3日間通してのグループ討議もありました。

ちなみに、ずっと行ってみたかった本の街、神田神保町にあるホテルを探して泊まりました。


1日目

学術情報リテラシー教育の理論と動向(講師:野末俊比古、時間:75分)

開会式のあとの初っ端ということでみんな緊張しているところを、野末先生がうまくアイスブレイクしてくださりました。 スマートフォンでリアルタイム投票・投稿・アンケートができる「イマキク」を使ったつかみがおもしろかったです。

メモ:

  • 学術情報リテラシー教育の「中身」はコミュニティに依存しているので、それぞれで考える必要がある。
  • 「学生が卒業したときに、何ができるようになっているか」について、図書館内で共通理解があるか?
  • 学術情報リテラシー教育を進める理念として、目指す利用者像(学生像)の実現に向け、「図書館ならでは」や「図書館だからこそ」の視点を持つ。
  • 教育目標・内容について、学術情報リテラシー教育の「見取り図」としての体系表を、利用者からみた記述で(主語を利用者にして考えて)作ってみるといい。
  • 利用者が気づいていない潜在的なものを見つけるのが専門職の仕事である。
    • 例えば、三角形の面積を求めたいなら、まず九九ができるようにならないといけない。その前提に気づいていないことを見つける。
  • カリキュラムの開発や実施を教員と協同して行うだけでなく、図書館職員が教員を兼任するなどして、直接授業を担当することも視野に入れるべきである*2

この日の夜に、参考文献に挙げられていた『情報行動』を購入しました*3

情報行動  システム志向から利用者志向へ (ネットワーク時代の図書館情報学)

情報行動 システム志向から利用者志向へ (ネットワーク時代の図書館情報学)


学術情報リテラシー教育における企画・立案(講師:井上真琴、時間:75分)

学習科学や学習理論の説明や文献紹介、新聞記事を使った学術情報リテラシー教育の実例紹介が勉強になりました。

メモ:

  • 図書館は従来、情報源の流通を重視してきたが、学術情報リテラシー教育では、情報をどう利用すれば、学生の認知・思考が活性化し、学習成果を生むのかを焦点とすべきである。
  • 学ぶとは、「日々得る情報を批判的に摂取し、新しい知識を創るために、頭の中の思考のスキーマ、インデクスを更新し、知識を再定義・再構成するプロセスそのもの」である。
  • 学習科学・学習理論に立脚した学術情報リテラシー教育を企画・立案する。
  • 「情報を使った学び」の経験ができる学術情報リテラシー教育を展開する。
  • ツールの操作にとどまらず、情報を使うときの「考え方」「読み方」「可用性」等に焦点をあてた内容にする。
    • モノ(情報)よりコト(行為)。

この日の夜に、参考文献に挙げられていた『勉強法の科学』を購入しました。

勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)


情報リテラシー教育と評価(講師:上岡真紀子、時間:75分)

インストラクショナル・デザイン、ADDIEモデルに基づいた学術情報リテラシー教育の流れが把握できてよかったです。普段、学習成果の評価をあまり意識しているとは言えなかったので、ドキッとしました。

メモ:

  • 「何を教えたか」ではなく、学生が「何を学んだか」への転換。
  • 学習成果、成果の評価及び主体的な学びを重視した授業・セミナーへ。
  • 到達目標を設定して、その達成を目指して授業・セミナーを設計し、その成果を検証しながら、図書館の教育活動の質の向上を図っていく。
  • 広報では、「必要」、「知らない・できない」と思わせることが重要。
  • 知りたいときに知ることができるようにする。
    • 例えば、WebページのOPACの横に、マニュアルへのリンクを配置する。
  • 検索エンジンで調べただけで単位がとれるなら、図書館やデータベースを使わない。
  • 特定のニーズ(必要なのに知らない・できない)に対して、具体的に何ができるようになればよいのか(到達目標)を設定する。
  • 「到達目標の設定→評価方法の決定(証拠集め)→教授方法の検討」という順番で設計する。
    • 評価方法の決定のあとに、教授方法の検討がくるのがポイント。
  • 到達目標を定めることで、何が必要で、何が必要でないかが明確になる。
  • 到達目標を定めることで、必要なことだけを、いかに工夫して教えればよいかを考えられる状態になる。
  • ポートフォリオやルーブリックを評価方法に活用する。
    • ポートフォリオ:学習活動において児童生徒が作成した作文、レポート、作品、テスト、活動の様子が分かる写真やVTRなどをファイルに入れて保存する方法。
    • ルーブリック:レベルの目安を数段階に分けて記述して、達成度を判断する基準を示すもの。
  • 入学直後の図書館オリエンテーション(図書館ツアー)はあまり効果がない。
    • アメリカの大学図書館では、やめているところもある。
  • 教員との連携からニーズを探り、ワンショット型からコラボレーション型で関われるように。
  • サービスの評価(満足度調査)ではなく、学習成果の評価(パフォーマンス課題・評価)へ。
    • アンケートではなく、学習者に本物の課題をやってもらう。
  • 教員と対話ができるようになる。


情報交換会

互いに知らなかった同じ研究室出身の先輩2名と知り合うことができました!

採用面接で1度お会いしたきりの部長(当時)にご挨拶したり、井上真琴さんに『図書館に訊け!』を大学生のときに読んで、勉強させていただいたことをご報告させていただきました*4

図書館に訊け! (ちくま新書)

図書館に訊け! (ちくま新書)


2日目

大学生に効果的な教授法+プレゼンテーション技法(講師:夏目達也、時間:165分)

内容もさることながら、夏目先生の講義スタイルに、ぐいぐい引き込まれていきました。大人数の講義にもかかわらず、双方向性の講義を体験できたのはいい経験です。

メモ:


教員と図書館員が連携する学術情報リテラシー教育(講師:長澤多代、時間:75分)

海外の大学図書館の事例紹介もあり、興味深かったです。

メモ:

  • 図書館内部の事情にもとづくサービスから、図書館が所属するコミュニティの要請に対応するサービスへの転換。
  • 3つの方針を示した図がわかりやすかった。
    • 学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー、DP)
    • 教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー、CP)
    • 入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー、AP)
  • 学習支援の到達目標の1つとして、学生が、図書館や図書館職員が自分たちの学習活動を支援する機関(職員)であることを認識することが挙げられていた。
  • 教育支援の到達目標の1つとして、教員が、図書館や図書館職員が自分たちの教育活動を支援する機関(職員)であることを認識することが挙げられていた。
  • 配布資料として『大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン』が挙げられていた。
  • 新任教員へのアプローチに重点を置く。
  • 教員の役割:学生が学習目標を達成するために、効果的な教育・学習のプロセスを設計、実行、評価
  • 図書館職員の役割:教育・学習プロセスの成果の向上を支援する図書館サービスのファシリテーター
  • 大学全体のニーズ(大学全体の教育計画)の把握するために、全学の教務委員会の議事を確認する。
  • 図書館と関連するポリシー(DP、CP、AP)を確認する。
  • 自らが教育に携わっていることを強く意識する。
  • 教授スキルを向上させる。
  • 学習支援や教育支援の担当を、付加業務ではなく、主要な業務と位置づける。
  • 学習支援や教育支援の担当者が、その業務に集中できる環境を整備する。
    • 単純作業を担当する支援スタッフを雇用する。
  • すべての教員と連携する必要はない。
    • 連携できる教員を見つけることが重要。
  • 海外の大学図書館では、週2時間、自主学習・研究する時間を設けているところもある。


3日目

情報リテラシー教育の再考(講師:久保山健、時間:60分)

ユーザーインターフェースについての指摘が参考になりました。

ふと、AmazonみたいなユーザーインターフェースOPACないのかなぁって思いました。左に書影、中央に簡単な書誌情報、右に入手方法、それらの下に詳細情報。

メモ:

  • そもそも図書館を使ってほしいわけではなく、学習や研究で成果を出してほしい。
    • 学生や教員や、学習や研究で成果を出したいと思っている。
  • 説明が必要なツールを提供している?
  • ベンダーに、説明不要のデザインについての要望を伝える(少しでいい)ことが、改善につながる。
  • 図書館以外のわかりやすいWebサイトのユーザーインターフェースも参考にするといい。
  • ユーザーにわかりやすい言葉を使用する*6 *7
    • OPAC?レファレンス?請求記号?
    • 開架の割合が多い場合には、請求記号よりも所在記号の方が伝わりやすいのではないかという指摘がありました。
    • 個人的には、「レファレンスカウンター」という名称よりも、例えばですが、「相談コーナー」や「調査・質問カウンター」の方がわかりやすく、しかも親しみやすい気がします。
  • 学んだことを日常の行動・考えに落としこむ。
  • 「「心の温度」どう維持するか。そのための仕掛けを自分で作る。」

この日の夜に、参考文献に挙げられていた『「分かりやすい表現」の技術』を購入しました。


グループ討議(3日間の発表までの討議時間:計385分)

下記の6つの要素のひとつに焦点を当てた班に分かれて、各所属機関のリテラシーへの取組状況・課題などを班のメンバー間で相互に報告し、整理・検討したあと、班ごとにテーマを設定し、解決策や活動企画などの成果について最終日に発表を行いました。

  • マネジメント(企画デザイン、運営体制、成果分析/評価、フィードバック、PDCAサイクルなど)
  • マーケティング(広報、PR、ニーズ把握、意識改革など)
  • 連携協力(教員/学内との連携協力、大学教育への関与、教育/学習支援、学生協働など)
  • 人材育成(職員/スタッフのスキルアップ、資質向上、ノウハウ/スキル継承など)
  • 指導内容(指導/教育内容、サービスメニュー、コンテンツなど)
  • 方法・手段(ツール、メディア、教材、学習環境整備など)

僕は、人材育成(職員/スタッフのスキルアップ、資質向上、ノウハウ/スキル継承など)のグループ(6班)でした。あっという間にグループ討議の時間がなくなった印象なので、3日間合計とはいえ、385分も討議していたとは思いませんでした。


4日目(?)

過去3年の参加者も含めた交流会(報告会と情報交換会)

事前にアナウンスがあり、11月21日(土)に過去3年の参加者も含めた交流会(報告会と情報交換会)が開催されました*8

(2015.11.21)学術情報リテラシー教育に関する交流会(仮称) - システム担当ライブラリアンの日記

その報告会のなかで、「受講年度の枠を越えた、全受講者のメーリングリストがあればいいのではないか」という提案がありました。そこで、「学術情報リテラシー教育担当者研修」の受講者や講師等の関係者を中心に参加を呼びかけ、学術情報リテラシー教育をメインテーマとしたメーリングリストを作成することにしました*9

学術情報リテラシー教育メーリングリスト」の宣伝*10

ゆるく広く(横道にもそれつつ)つながるMLに育てていければと思っております。2015年12月24日時点で、52名のメンバーがいます。ぜひみなさまお気軽にご参加ください。

基本情報:

*1:どんな場所・建物なんだろうかとわくわくしていました。NIIは大きいビル(学術総合センター)の上層階部分なんですね。勝手に筑波大学の近くにある研究所たちを想像していたので、予想外でした。都心ですもんね。

*2:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1301602.htm

*3:学生時代からずっと気にはなっていたけど、買っていなかったのでいい機会でした。

*4:そして、ぜひ改訂版を出版してほしいとお伝えしました。

*5:書籍版はずっと前に書籍は購入しているけど、まだ読んでいない。

*6:たしかに、大学生のときにOPACって言葉をはじめて聞いて、オンライン?パブリック?普通のWebサービスと違うの?って思いました。ちなみに、レファレンスサービスもなんのことかわからなかったです……。ちなみに、大交流会で、わかりやすい名称にする以外には、高等教育よりも前の段階の情報リテラシー教育も含めて、きちんと教えればいいのではないかという意見がありました。

*7:あと、機関リポジトリディスカバリー・サービスに関しては、各大学図書館がいろんな名前つけていて、そもそも何の愛称・略称なのか、どういう意味なのかがわからないのが多い気がします。各大学ではきちんと定着しているのかな?

*8:僕は、報告会までの参加でした。

*9:上岡先生の「作ってよ!」の一声がきっかけです。

*10:別の記事できちんと広報したい!

*11:僕の連絡先を知らない方へのフォローができていないです。問い合わせフォームなどを設置したいところ。